東京地方裁判所 昭和57年(ワ)15742号 判決 1989年1月31日
原告
青木達典
右訴訟代理人弁護士
松田政行
被告
株式会社富士銀行
右代表者代表取締役
荒木義朗
右訴訟代理人弁護士
下飯坂常世
同
海老原元彦
同
広田寿徳
同
竹内洋
同
馬瀬隆之
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、一九五万〇二五〇円及びこれに対する昭和五六年一〇月二三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 第一項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 被告は、銀行取引を業務とする株式会社である。
2 原告は、被告との間で、昭和三一年四月二六日、普通預金口座取引契約を締結し、右契約に基づき、昭和五六年四月二二日当時、被告四谷支店の原告の総合口座(口座番号四二八五)に預金債権残高二〇五万五六七二円を有していた。
3 原告は、被告に対し、昭和五六年一〇月二二日、右預金のうち一九五万〇二五〇円の返還を求めた。
4 よって、原告は、被告に対し、普通預金契約に基づき一九五万〇二五〇円及びこれに対する弁済期の翌日である昭和五六年一〇月二三日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
請求原因1ないし3の事実はすべて認める。
三 抗弁
1 弁済
(一) 原告と被告とは、昭和五一年一二月二日、次の約定により富士キャッシュカード取引をする旨合意した。
(1) 富士キャッシュカード(以下「カード」という。)の利用を申し込んだ預金者は、被告に対し、四桁の数字をもって構成する暗証番号(暗号)を届け出る。
(2) 被告は、預金者が届け出た暗証番号を磁気テープ化し、その磁気テープを貼布したカードを預金者に対して交付する。
(3) カードを所持する預金者は、カードを使用して、現金自動支払機(キャッシュディスペンサー。以下「支払機」という。)の指示するところに従い、届出に係る暗証番号を入力して預金の払戻しを受けることができる。
(4) 預金者は、手数料を支払って、被告と提携している他の銀行の支払機も利用することができる。
(二) 被告は、原告に対し、左記の日時、場所において、支払機による支払の方法により、原告の預金口座から本訴請求に係る一九五万〇二五〇円を弁済した。
(1) 昭和五六年四月二三日午前九時二五分から三一分までの間
被告府中支店
一四〇万円(各回二〇万円ずつ七回)
(2) 右同日午前九時三七分から四三分までの間
被告の提携銀行である三菱銀行府中支店
五五万〇二五〇円(各回一一万〇〇五〇円(うち五〇円は手数料)ずつ五回)
2 免責特約による免責
(一) 仮に前項の支払が原告に対してされたものでないとしても、富士キャッシュカード取引には、富士キャッシュカード規定が適用されるものであるところ、同規定には、「支払機によりカードを確認し、支払機操作の際使用された暗証と届出の暗証との一致を確認のうえ預金を払い戻しました場合には、カードまたは暗証につき偽造、変造、盗用その他の事故があっても、そのために生じた損害については、当行および提携行は責任を負いません。」との条項(以下「本件免責特約」という。)がある。
(二) 1(二)の支払(以下「本件支払」という。)は、支払機において、本件支払に使用されたカード(以下「本件カード」という。)の形状、磁気ストライプ部分に印磁されている暗証番号、暗記号等が真正カードと一致していることを確認し、支払機が本件カードが真正カードであると判定したうえ、されたものであるから、被告は、本件免責特約により免責される。
3 準占有者弁済
キャッシュカード取引においては、真正なカード及び正当な暗証番号を使用して、預金を払戻すべく所定の方法により支払機を操作する者が、取引観念の上から真実の債権者であると信じさせるような外観を有する者、すなわち債権の準占有者であり、銀行が過失なくその者に対して支払をすれば、その者が仮に真の預金者でなかったとしても、民法四七八条により免責される。
本件支払は、真正カードを所持する者が正当な暗証番号を使用して支払機を操作することによりされたものであり、かつ、被告において、暗証番号の管理は十分に行い、第三者に漏洩する可能性はなく、また、本件暗証番号の問合わせを受けてこれを教えたこともなかったのであるから、被告が、本件支払を受けた者を債権の準占有者であると信じて支払ったことにつき、何ら過失はなかったというべきである。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1(一)の事実は認める。同1(二)のうち、被告主張の日時、場所で原告の預金口座から支払機による支払がされたことは認めるが、右支払が原告に対しされたものであることは否認する。
2 同2(一)の事実は認める。同2(二)の事実は否認する。
3 同3後段の事実は否認する。
五 原告の主張
1 免責特約の効力と解釈について
本件免責特約は、規定の仕方自体に矛盾を含んでおり、無効である。すなわち、「支払機によりカードを確認し」とあるが、この「カード」は、富士キャッシュカード規定一条に「『富士キャッシュカード』(以下『カード』といいます)」とあるところから、真正カードを指し、偽造カードは含まないはずである。したがって、本件免責特約は、支払機が真正カードを確認しなければ、そもそも適用にならない形になっている。しかるに、本件免責特約の後段は、「カードにつき偽造があっても銀行は責任を負わない」旨規定しており、この規定をそのまま解釈すれば「支払機が富士キャッシュカードの真正なることを確認したならば、そのカードが偽造であっても銀行は責任を負わない」ということになるが、真正を確認されたカードが偽造であるわけがないから、これは矛盾である。このような矛盾規定によって、一方的に預金者にすべての危険を負わせることはできず、本件免責特約は、その内容が不明確であるから無効というべきである。
仮に、本件免責特約を矛盾なく、かつ、違法がないように解釈するならば、「支払機において、相当の注意をもってカードを真正なものと認めて取り扱ったうえは、そのカードが偽造であっても責任を負わない」と定めたものと解するのが妥当である。ただ、支払機自体が「相当の注意」を払うことはありえないから、支払機の背後に存在する人間の注意義務、すなわち、支払機による現金払出自体ではなく、これに至る支払過程の全体について管理上の過失がないかを問題にすることになる。通帳、印鑑の保全はもっぱら預金者側の問題であるのに、カード及び各種コード、暗証番号は、銀行側の関与によって作られるものであるから、銀行側もカード、暗証番号について保全の責めを負うものといわざるをえない。したがって、システムの安全性、特に、暗証番号が他人に知りえないというセキュリティーの確保がこの規定の適用の要件となるものであり、被告は、システム自体の安全性を確保し、その安全性を主張立証してはじめて免責の効果を受けることができるものというべきである。
2 準占有者弁済規定の適用について
民法の債権の準占有者に対する弁済に関する規定は、通帳、印鑑による支払等の場合のように、支払請求者の挙動、応答等を人間が判断して支払請求者が真の権利者であるかどうかを判定することが可能な場合における支払者の保護を定めたものであって、右の要素の全く存在しない支払機による支払については適用がない。
仮に、適用があるとしても、人間の介在する支払に関する規定を支払機による支払の場合にも適用するためには、過失ないし注意義務の判断を支払時に限定するのではなく、システム設計、暗証番号、その他のコードの管理等システム全体の安全性を総合して銀行の過失の有無を決するべきであるから、結局、免責規定と同様、システムの安全性を主張立証することが、右規定の適用の要件となるというべきである。
3 被告キャッシュカードシステムの安全性について
本件当時の被告のキャッシュカードシステム(以下「本件支払システム」という。)は、端末確認方式をとり、カードの磁気ストライプ上に暗証番号をコード化してのせておき、利用者が支払機(端末機)にこのカードを入れたときに、支払機がカード上のコードを読み取り、利用者が支払機のキーボードから入力する暗証番号と符合するか否かをチェックする方式である。したがって、カードはいわゆる「ゼロ化」されておらず、確認のデータである暗証番号等のデータはカード上に格納されている。これは、通帳と印鑑を一つにまとめているのと同じであって、拾得者、盗用者がコードを読み取ることができると預金が簡単に引き出されてしまうことになる。カード上のコードが特別な機器や高度な技術を用いなければ判読できないというのであれば、相当の安全性があり免責の基礎になりうるであろうが、本件支払システムはカードがゼロ化されていないだけではなく、カード上のコードをコンピュータで文字を示す場合の共通コード表であるアスキーコード表によって作成しているため、市販のカードリーダーをパソコンに接続すれば、簡単に暗証番号を知り、コピーを作り、あるいはコードを変更したカードを作ることができるようになる。また、銀行のごみ箱から利用明細書を拾ってきて、そこにのっている情報からカードを偽造することも十分可能であるほか、電話回線上の情報の解読や銀行が依頼したメンテナンス要員が情報を窃取することによっても、偽造は容易である。
したがって、被告の免責特約による抗弁及び債権の準占有者に対する弁済の抗弁は、いずれも、その要件であるシステムの安全性(システム構築に過失がないこと)が確保されておらず、免責の基礎を欠くものといわざるをえない。
4 本件カード及び暗証番号の確認について
被告は、本件免責特約による免責の抗弁を主張する以上、本件支払の際、支払機がカード及び暗証番号を確認したことを主張立証しなければならない。支払機は、カード上のコードを機械的に読み取って、コードとの一致を確認してカードを確認し、次に入力された番号を確認して暗証番号との一致を確認しているのであるから、被告は、本件支払において、入力された番号が届出暗証番号(本件では一九三六)と一致していたことを示さなければならない。これは、紙ベースの取引で払出請求票の印影と届出の印影とが一致することを主張立証する必要があるのと同じである。ところが、本件支払の際、入力された番号が一九三六であることについて、被告は何らデータを記録しておらず、被告が免責を得るために必要なカード及び暗証番号の一致を確認したことを示す証拠はないから、被告は本件免責特約による免責を主張することができない。なお、被告は、本件支払の際、支払機によって記録された本件カードの現金自動支払機記録票(以下「記録票」という。)と本件検証期日において、同じ支払機によって記録された真正カードの記録票とを比較し、両者に記録された「3―100241―004285 アオキ タツノリ」のエンボス文字の感圧文字が一致することを根拠に、本件支払は真正カードを利用してされたものであると主張している。しかし、エンボス文字は、JIS規格化され、固有の特徴を有しておらず、記録票上のエンボス文字の感圧文字の特徴は、支払機の感圧装置の特徴を示すものにすぎないというべきであるから、エンボス文字の感圧文字の一致の事実によって真正カード使用の事実を立証することはできないというべきである。
5 まとめ
以上のとおり、被告の免責の抗弁は、いずれも要件であるシステムの安全性が確保されておらず、また、暗証番号一致の証拠もないから成立しない。
六 被告の主張
1 本件免責特約について
原告が指摘する条項の「カードを確認し」の「カード」は偽造を前提とした意味のカードであり、規定一条において定義した「カード」とは意味を異にするものであって、「カード」の意味の異なる条項があったとしても、規定自体無効となることはない。そして、富士キャッシュカード取引をするか、しないかは、もっぱら、顧客の任意の選択に委ねられているものであり、顧客は富士キャッシュカード取引をすることが、顧客にとって、より便利であると判断して、富士キャッシュカード規定を了承のうえ右取引をするものであり、原告も自ら希望して右取引を開始したのであるから、本件免責特約は完全に効力を有するものである。なお、原告は、被告がゼロ化されていないカードシステムを採用している以上、免責の抗弁は失当である旨主張するけれども、カードの磁気ストライプ部分に印磁されている暗証番号を解読するためには、本件支払システムに使用されているカードの磁気ストライプ部分にいかなるデータが入力されているかを知り、かつ、解読するための特殊な機器及び技術を有することが必要であり、マニア的な特別の者を除き、容易に解読することができるものではない。したがって、通帳印鑑方式よりも本件支払システムの方がより安全といっても過言ではないから、原告の右主張は理由がない。
2 準占有者弁済について
キャッシュカード取引においては、顧客は、預金の支払担当機関が支払機という機械であり、支払に際して人間が関与する余地がなく、したがって、預金の払戻しの手続きをする者の風采、挙動、応答等を観察することはできないこと、キャッシュカードを所持し、暗証番号を知っている者が何人であれ、支払機を利用することにより、預金の払戻しをすることができるということを熟知したうえ取引を開始するものであり、このような取引においては、真正カード及び正当な暗証番号を使用して、預金を払い戻すべく支払機を操作する者に対して支払をした場合には、民法四七八条の適用があるというべきである。
3 本件カード及び暗証番号の確認について
本件カードが真正カードであったことは、以下の諸点から明らかである。すなわち、
(一) 本件支払の際に、被告府中支店の支払機(機番五二六五一号機)によって作出された本件カードの記録票(乙第二号証の一ないし七)上に記録された「3―100241―004285 アオキタツノリ」のエンボス文字の感圧文字が、原告が所持する真正カードを利用し、同じ支払機によって作出された真正カードの記録票(検証手続により収集されたもの)上に記録されたエンボス文字の感圧文字と一致する。
(二) 原告が本件支払システムによる取引を開始した昭和五一年一二月以降、本件カードが使用された昭和五六年四月二三日までの間における被告のキャッシュカード作成過程は、多少の変更はあったものの、キャッシュカード取引の申込み受付、白地カードの発注、納入及び管理、磁気テープの作成及び管理、キャッシュカード作成の各部門における暗証番号、白地カード、磁気テープの管理は厳重にされていた。また、本件支払システムに使用されるカードの磁気ストライプ部分には、支店番号、口座番号、暗証番号のほか、これらの番号から一定の数式により算出される数桁の記号からなる暗号(暗記号)が印磁されるが、この暗記号の算出方式は重要な企業秘密であって、これを知りうる者は、被告内部の特定の数人にすぎず、正当な暗記号が印磁されていないカードは、支払機から支払を受けることができない。したがって、本件支払システムに使用されるカードを偽造することは事実上不可能であった。
(三) 本件カードが偽造カードであったならば、その偽造者は富士キャッシュカードについて高度の知識と技術を有している専門家でなければならないと考えられるが、そのような専門家であれば、支払機を利用して支払を受けるには、カードにエンボス文字等を打刻する必要がないことを熟知していたはずである。しかるに、本件カードには、口座番号、氏名等がエンボス文字をもって真正カードと寸分の狂いもなく打刻されていた。
(四) 原告は、真正カードを原告の事務所内の事務机の施錠されていない引出し内に保管し、格別注意して保管していたわけではないから、何人かが、原告に覚知されることなく、机の引出しからこれを一時的に盗用し、再び戻しておくことが十分可能な状況であった。
右のとおり、本件支払は真正カードでされたものと認めるほかないが、真正カードの磁気ストライプ部分には、前記のとおり、支店番号、口座番号、暗証番号等及びそれらの番号から一定の数式により算出された数桁の記号からなる暗記号が印磁されており、その暗記号はホストコンピュータによりチェックされている。つまり、本件支払がされたということは、暗記号がホストコンピュータにより正確な暗記号であると確認されたことを意味し、したがって、当然に正当な暗証番号が使用されたことを意味するのであり、預金の支払がされたということこそ正当な暗証番号が使用されたことの証拠である。また、真正カードの磁気ストライプ部分は何ら改ざんされていないのであるから、真正カードを使用してされた本件支払が正当な暗証番号を使用してされたものであることは、この点からも明らかである。
4 まとめ
以上のとおり、本件免責特約は有効であり、かつ、キャッシュカード取引においても準占有者弁済の規定は適用されるものであるところ、本件支払は、真正カードを所持する者が支払機を操作することによりしたものであり、かつ、正当な暗証番号が使用されたことは明らかであるから、本件支払につき被告は免責されるべきである。
第三 証拠<省略>
理由
一請求原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。
二抗弁について
被告主張の日時、場所で、原告の預金口座から支払機による支払がされたことは当事者間に争いがないが、本件支払の際、被告府中支店において記録されたビデオテープを写真撮影したものであることに争いがない乙第九号証の一ないし一五、原告本人尋問の結果及び検証(第二回)の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件支払の際、被告府中支店において記録されたビデオテープには、不鮮明ながら、原告以外の男が同店備付けの支払機(キャッシュディスペンサー)を使用して本件支払を受けている状況が写っていることが認められ、右認定事実によれば、これと近接した時間、場所でなされた三菱銀行府中支店における支払も右と同一の人物によってなされたものと推認することができ、他に本件支払が原告本人に対してされたものであることを認めるに足りる証拠はない。そこで、被告の免責特約による免責の抗弁(抗弁2)について判断する。
1 本件免責特約の成立について
富士キャッシュカード規定に本件免責特約がおかれていることは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告は、昭和五一年一二月二日ころ、被告に対し、キャッシュカードによる取引をする旨の申込みをし、同月八日ころ、被告から真正カード及び本件免責特約を含む条項が印刷されている富士キャッシュカード規定の送付を受けたことが認められ(原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は、証人宍戸育夫の証言に照らし採用しない。)、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。右認定事実によれば、昭和五一年一二月ころ、原告と被告との間で、本件免責特約が成立したというべきである。
2 本件免責特約の効力について
(一) 原告は、本件免責特約は、その規定の仕方自体に矛盾を含んでいるから無効である旨主張する。
しかしながら、本件免責特約の「支払機によりカードを確認し」以下の文言は、これを合理的に解釈するならば、「支払機が真正カードとして処理した以上、事後になって、偽造カードであることが判明したとしても、銀行は責任を負わない。」という趣旨を定めたものと解することができるから、その内容において矛盾するものではない。したがって、原告の右主張は採用することができない。
(二) 次に、原告は、本件支払システムは、免責特約の適用の要件となるべきシステムの安全性が確保されておらず、特に、本件支払システムに使用されるカードは磁気ストライプ部分に暗証番号をのせている点に危険性が認められるから、被告は、本件免責特約による免責を主張することができない旨主張する。
そこで、検討するに、まず、<証拠>によれば、本件支払がされた昭和五六年当時、本件支払システムに使用されていたキャッシュカードの磁気ストライプ部分には、届出暗証番号がコード化されて印磁されていたが、コード化に当たりコンピュータで文字を示す場合の共通のコード表であるアスキーコードを使用しているため、市販のカードリーダ(昭和五六年当時、既に市販されていたことが認められる。)をパソコンに接続すれば、真正カードの盗取者等は届出暗証番号を知ることができ、カードリーダ・ライタを使用すればそのコピーを作ることも可能であったこと、届出暗証番号は、市販の磁気像影液等を真正カードの磁気ストライプ部分に塗ることによっても解読することができること(ただし、本件支払当時、右磁気像影液等が市販されていたことを認めるに足りる証拠はない。)、真正カードが手に入らない場合でも、昭和五七年一月ころ、日本電信電話公社(現NTT)の技術者が銀行と日本電信電話公社のコンピュータを結ぶデータ通信回線の信号音を分析することにより暗証番号等を知り、カードを偽造して現金を引き出した例があったこと、昭和六三年に入ってからも、コンピュータ会社の社員が自分のカードの磁気テープ上のデータを分析し、かつ、捨てられていた利用明細書上の情報を利用して偽造カードを使用した例があったことが認められ、これに反する証拠はない。
しかしながら、他方、<証拠>によれば、昭和五七年から昭和五八年にかけて発生したキャッシュカード犯罪は、窃取又は拾得したカードを使用したものがその大部分(昭和五七年度は94.1パーセント、昭和五八年度は83.5パーセント)を占めること、昭和五九年に発生したキャッシュカード犯罪も、窃取したカードを使用したものがその大部分を占め、しかも、その多くは、被害者の暗証番号の選択やその管理に問題があったと考えられるものであったこと、本件支払システムに使用されているキャッシュカードの磁気ストライプ部分には、銀行共通コード、暗証番号、銀行コード、支店コード、口座番号、暗証番号のほか、それらの番号と連動して一定の数式により算出される暗記号と呼ばれるデータが印磁されており、本件支払システムにより支払を受けるためには、まず、支払機において、銀行協会が提携している使用可能なカードであるかどうかを銀行共通コードにより確認し、次に、支払機及びホストコンピュータの両者において、カード上の暗証番号と支払機を操作する者が入力した暗証番号との一致を確認し、更にホストコンピュータにおいて、カード上の磁気ストライプ部分に印磁されている暗記号と、カードの磁気ストライプ部分のデータをもとにホストコンピュータにあらかじめ組み込まれている暗記号の算出のための数式により計算した結果とが一致することを確認しなければならないこと(提携銀行の支払機を利用する場合も同じ。)、したがって、届出暗証番号以外の番号を使用して支払を受けるためには右暗記号も正確に偽造されていなければならないこと、エンボス文字の刻字がなくても磁気ストライプ部分のデータが右の方法で確認されれば、支払を受けることができること、暗記号の算出のための数式は、被告のシステム開発室の責任者が重要物件台帳に登録のうえ、右台帳を常時施錠できるキャビネットに保管し、被告において企業秘密として厳重に管理していること、以上の事実が認められ、これに反する証拠はない。
以上の認定事実から判断すると、確かに、磁気ストライプ部分に暗証番号をのせているカード(いわゆる「ゼロ化」されていないカード)の場合は、そうでないカードの場合よりも暗証番号が漏洩する免険性が大きいと考えられるが、従来の通帳と印鑑のシステムの下においても、通帳には届出印が押印されているのが通常であるから、盗取者や拾得者において、届出印の形状、寸法、字体等を容易に知ることができるのであって、両者の間に実質的に大きな差異があるとは認められないし、磁気ストライプ部分の暗証番号を解読するためには、コンピュータに関する相応の知識が必要である(そのうえ、本件支払当時、カードリーダ等を利用して磁気ストライプ部分上の暗証番号を解読した事例が多く発生していたことを認めるに足りる証拠はない。)。そして、これらの危険性は、預金者において、カード管理を十分にすることによって容易に防ぐことができる性質のものである。また、真正カードを手に入れることなくカードを偽造するためには、暗記号の存在及びその算出のための数式等本件支払システムやコンピュータに関する相当高度の専門的知識を要することが明らかであり、前記認定の偽造の事例等が存することから、直ちに一般的にカードの偽造が容易であるということはできない。そうすると、本件支払システムが、本件免責特約の効力を否定しなければならないほど、およそシステムとしての安全性を欠如するものであるということはできないというべきである。したがって、本件支払システムの安全性が確保されていないことを前提とする原告の右主張も採用することができない。
3 そこで、次に、本件カード、すなわち本件支払に使用されたカードが真正カードであったか否かについて判断する。
(一) <証拠>によれば、以下の事実が認められる。すなわち、
(1) 真正カードである原告名義のキャッシュカード(検甲第一号証。鑑定資料一号)の表面には、エンボス文字で、銀行番号欄に「3」の数字、区分・店番号欄に「100241」の数字、口座番号欄に「004285」の数字、各欄の間に「―」の記号がそれぞれ凸状に刻字されており、また、銀行番号「3」の数字の下から店番号末尾の「1」の数字の下までにかけて「アオキ タツノリ」の文字が凸状に刻字されている。そして、本件支払システムにおいては、支払機により支払がされた場合には、その都度、感圧複写紙を利用した記録票に右エンボス文字の感圧文字が記録される仕組みになっている。
(2) 本件支払の際、被告府中支店内の機番五二六五一号の支払機(以下「本件支払機」という。)によって記録された記録票七枚(乙第二号証の一ないし七。鑑定資料三号)及び検証(第一回)の際、前記鑑定資料一号の真正カードを使用して本件支払機に記録させた記録票五枚(鑑定資料二号)の各下部の縦約2.15センチメートル、横約6.75センチメートルの緑色枠内部分には、それぞれ、エンボス文字の感圧文字により、「3―100241―004285 」、「アオキ タツノリ」の記録がされている。
(3) 鑑定人長野勝弘は、右各鑑定資料一ないし三号の拡大撮影を行い、幾何学的作図法、スーパーインポーズ法のほか、顕微鏡検査を用いて、各鑑定資料中の「3―100241―004285」、「アオキ タツノリ」の文字を比較対照した。その結果、同鑑定人は、鑑定資料一号(原告所持の真正カード)中のエンボス文字と鑑定資料二号(前示本件検証の際の記録票)及び鑑定資料三号(被告府中支店における本件支払の際の記録票)中の感圧文字とは、文字の大きさ、配字、字画の太さ、字画形態、字画構成、文字全体の形等に共通する点が多く見られること、また、鑑定資料二号及び三号中の各感圧文字には、押圧力が強い部分(銀行番号「3」の数字の始筆部及び終筆部、区分「1」の数字の始筆部及び終筆部、店番号「2」の数字の左下方の転折部、口座番号「4」の数字の第一筆縦線部、口座番号「2」の数字の横線状の部分、「タ」「ノ」の文字部分など)及び弱い部分(口座番号「5」の数字の終筆部、「ツ」「リ」の文字部分など)に共通性が認められるほか、字画の一部が不明瞭になる部分も共通しており、これらは、固定的な押圧力分布が原因となって顕出状態が一致したものと考えられ、同一の凸型(エンボス文字)によって顕出された可能性が極めて高いこと、しかも、鑑定資料二号と三号は、同一の現金自動支払機によって記録されており、鑑定資料二号の五枚の記録票中及び鑑定資料三号の七枚の記録票中の文字の顕出状態に恒常性がある点からみても、鑑定資料二号と三号との特徴の一致は偶然のものとは考えられないこと、以上の諸点を認め、結論として、乙第二号証の一ないし七(鑑定資料三号)の記録票中の「3―100241―004285 」、「アオキ タツノリ」の文字は、検甲第一号証のキャッシュカード(鑑定資料一号)のエンボス文字の押圧によって顕出されたものである旨鑑定した。
(二) ところで、原告は、右鑑定の結果につき、真正カード上のエンボス文字は規格化され、固有の特徴を有しないものであり、記録票上の感圧文字の特徴は、本件支払機の感圧装置の機械的特徴を示すものにすぎないから、エンボス文字の感圧文字一致の事実は、本件カードが真正カードであったことの証拠とするに足りない旨主張する。
そこで、原告の右主張を考慮しながら、鑑定人長野勝弘の鑑定の方法及び結果につき検討すると、確かに、成立に争いのない甲第二七号証及び証人井上雅明の証言によれば、真正カードに使用されているエンボス文字はJIS規格化されたものが用いられていることが認められ、しかも、鑑定資料三号(被告府中支店における本件支払の際の記録票)、鑑定資料二号(本件検証の際の記録票)、乙第三号証の一ないし六(三菱銀行での本件支払の際の記録票)及び検甲第二ないし第五号証(原告代理人が被告虎ノ門支店で検甲第一号証の真正カードを使用して記録させた利用明細票)上の各感圧文字を比較検討しても、記録票に記録された感圧文字に、支払機の感圧装置によって生ずる特徴のほか、カード上のエンボス文字自体の固有の特徴も現われているのかどうか判然としないものがある。このように、カード上のエンボス文字が固有の特徴を有するものであるのかどうか、また記録票上の感圧文字が感圧装置の固有の特徴以外にカード上のエンボス文字自体の特徴をも反映したものであるのかどうかが明確にされていない以上、前記鑑定の結果のみによって直ちに本件支払に使用された本件カードが真正カードであったことが疑いの余地がないほど確実であると断ずることはできない。
しかしながら、記録票の感圧文字の特徴が、カード上のエンボス文字の固有の特徴と支払機の感圧装置の固有の特徴とが渾然一体となって生ずるものである可能性は否定しえないところであり(証人長野勝弘は、これに沿う供述をしている。)、少なくとも、同一の感圧装置により顕出された鑑定資料二号(本件検証の際の記録票)と鑑定資料三号(被告府中支店における本件支払の際の記録票)の各感圧文字が同一の特徴をもって記録され、しかも、各文字の配置状況、配置間隔が良く一致しているという事実は、鑑定資料三号の記録票が真正カードによって顕出されたものであることを推測させる一つの有力な資料であるというべきである。したがって、前記鑑定の結果は、その限度で、本件支払に使用された本件カードが真正カードであったことを示す有力な証拠といって差支えない。なお、鑑定資料二号(本件検証の際の記録票)と鑑定資料三号(被告府中支店における本件支払の際の記録票)とでは、口座番号欄の最後の「5」の数字の位置にわずかなずれがあることが認められるが、鑑定資料三号(被告府中支店における本件支払の際の記録票)の「5」の数字の位置は、鑑定資料一号(原告所持の真正カード)の「5」の数字の位置とむしろ一致していることが認められるから、右「5」の数字の位置のずれの存在は、前記判断を左右するに足りない。
(三) 次に、原告は、キャッシュカードの偽造が極めて容易であることを縷縷主張するので、本件カードが偽造のものであった可能性の有無について検討する。
(1) まず、<証拠>によれば、昭和五一年にカードを入手してから本件支払がされるまで、一度もこれを利用して現金を引き出したことがなかったことが認められ、これに反する証拠はない。したがって、少なくとも、本件支払は、データ通信回線の信号音を録音、解読する等して得た情報に基づいて作成された偽造カードないし利用明細書に記載された口座番号等の情報に基づいて作成された偽造カードを使用してされたものでないことは明らかである。
(2) そこで、次に、本件カードが被告内部の者又は被告から秘密を入手した外部の者によって偽造されたものである可能性があるか否かについて検討すると、<証拠>によれば、昭和五一年当時から本件支払当時まで、被告は、本件支払システムに使用するキャッシュカードの作成を、すべて、被告東京事務センターの事務集中課において行っていたこと、右東京事務センターの建物の出入りは、被告行員であるか否かを問わず各種方法により、二四時間を通じて厳重にチェックされていたこと、昭和五四年三月までのカード作成手続は、顧客がカードの利用申込み時に記載したカード利用申込書(三枚綴り)のうちの複写になった一枚(発行依頼書)を、各営業店舗が被告東京事務センター事務集中課に送付し、右カード発行依頼書に基づき、日本カードサービス株式会社の派遣社員が、被告東京事務センターの建物内で白地カード上にエンボッサーによりエンボス文字の刻字をし、その後、被告行員が別室でエンコーダーにより磁気ストライプ部分に銀行番号、店番号、口座番号、暗証番号及び暗記号を印磁してカードを作成していたこと、右エンコーダーには、暗記号の計算式が組み込まれ、磁気ストライプ部分には自動的に暗記号が印磁される仕組みとなっており、エンコーダーを使用するオペレーターは暗記号については一切知らされていなかったこと、これに対し、昭和五四年四月以降、カード作成手続が一部変更され、顧客のカード発行依頼書を被告東京事務センターに送付することを廃止し、その代わりに、各営業店舗のオンラインの端末機から所要のデータを被告東京事務センターのコンピュータに直接入力し、かつ、エンボス文字の刻字と磁気ストライプ部分への印磁は、右コンピュータから、カード発行に必要なデータのみを出力された磁気テープに基づき、エンコーダーとエンボッサーが一体化されたオートエンボスエンコーダーにより、両者を自動的に同時に行うようになったこと、カード作成後、右磁気テープ上の暗記号を含む各種データは作成当日のうちに消去されてしまうこと、したがって、被告内部の者が、単にオートエンボスエンコーダーを使用して偽造カードを作成しようとしても著しく困難な仕組みになっていること、昭和五四年四月の変更に伴い、同年三月以前に使用していたエンコーダーは、すべてその回路基板等を破壊したうえ廃棄処分に付され、また、日本カードサービス株式会社の派遣社員は不要になったこと、昭和五四年四月以前も以後も、白地カード及び完成カードの枚数のチェックは重要帳票受払帳やエンコーダーのカウントナンバー等により厳重に行われていたこと、以上の事実が認められ、これに反する証拠はない。
右認定事実に前示のとおり暗記号の管理が厳重に行われていたことを併せ考えると、被告内部において、カードを偽造することは極めて困難であったというべきであり、少なくとも、本件においては、全証拠に照らしてみても、本件支払に使用されたカードが被告内部の者又は被告出入業者等の被告から秘密を入手した関係者によって偽造されたものであることを疑わせるような具体的な事情は何ら見当たらない。
(3) 右(1)、(2)に認定した事実によれば、本件カードが偽造カードである可能性は極めて低いということができる(本件に顕れた証拠から判断する限り、右(1)、(2)以外の態様により作成された銀行発行名義の偽造キャッシュカードを使用して支払機(キャッシュディスペンサー)から預金を払い出した事例が存するとは認められない。)。
(4) 加えて、真正カードを手に入れることなくこれと同一のカードを偽造するためには、本件支払システム及びコンピュータに関する相当高度の専門的知識が必要であると考えられるところ、このような知識を有する者であれば、本件支払システムにおいて偽造カードを使用して支払を受けるために、右偽造カード上にエンボス文字をわざわざ刻字してこれを偽造することは不要であることを十分知りうるはずであるということができる(もっとも、前掲甲第四号証によれば、キャッシュカードを偽造して支払機(キャッシュディスペンサー)から金員を引き出した事例中に、キャッシュカード上のエンボス文字まで偽造した事例があることが認められる。しかし、右事例は、銀行員がエンコーダーという特殊な機械を使用してキャッシュカードを偽造したという銀行内部の者の犯罪であり、偽造を容易に看破されないようにするためにキャッシュカード上のエンボス文字まで偽造したものであることが窺われるから、右事例の存在は、前記認定及び判断の妨げとならない。)。しかるに、本件カードにおいては、本件支払の際、記録された記録票から判断して、エンボス文字が真正カードと同様の配置状況、配置間隔をもって刻字されていたことが認められるのであるから、これに前記2(二)のとおり、キャッシュカード犯罪の大部分が真正カードを盗取された事例であることを併せ考えるならば、本件支払に使用されたカードが偽造カードであった蓋然性はほとんど想定し難いといわざるをえない。
(四) 更に、原告の真正カードの管理使用状況についてみると、原告は、本件支払後の昭和五六年五月二〇日ころ、真正カードを事務所の事務机の引出しから発見した旨供述しているところ、同じく原告本人尋問の結果によれば、原告は、真正カードを右事務机の施錠されていない引出しに保管し、同人自身も格別注意を払って真正カードの存在を確かめたことはなく、右事務机付近には、原告以外の者も近づくことが不可能ではなかったことが認められるから、原告本人の右供述部分は、本件支払につき、真正カードが一時不正に使用されたことまでを否定するには足りない。
(五) 以上の認定事実を総合すると、被告府中支店における本件支払及びこれと時間、場所を近接してされた三菱銀行府中支店における本件支払は、いずれも、真正カードを使用してされたものと推認するほかなく、他に右推認を覆すに足りる証拠はない。
4 そこで進んで、被告の本件免責特約による免責の成否につき判断する。
(一) 右認定のとおり、本件支払は、真正カードを使用してされたものと認められるところ、弁論の全趣旨によれば、本件において、真正カードの磁気ストライプ部分の届出暗証番号は何ら改ざんされておらず、また、本件支払当時、本件支払システムは正常に作動していたことが認められるから、本件支払は、届出暗証番号(一九三六)が入力された後、前示の本件支払システムの支払手順どおり、支払機及びホストコンピュータの両者において、それが、カード上の届出暗証番号と一致することを確認し、ホストコンピュータにおいて、暗記号の計算結果もまた一致することを確認したうえでされたものと認めることができる。
(二) ところで、本件支払を受けた者が誰であり、またその者がどのようにして暗証番号を知ったのかを推認させる証拠はないが、<証拠>によれば、キャッシュカード取引を始めるに当たり原告が暗証番号等の所定事項を記入した富士キャッシュカード利用申込書は、被告四谷支店の営業課長が金庫内の施錠された専用キャビネットの中に保管し、その鍵も営業課長が保管していたこと、被告は、真正カードが発行された昭和五一年一二月以降、本件支払がされた昭和五六年四月当時に至るまで、原告の暗証番号について一度も外部から照会を受けて教えた事実はないことが認められ(これに反する証拠はない。)、右認定事実に前示3(三)(2)の被告東京事務センターにおけるキャッシュカード作成についての管理体制を総合すると、被告が、本件支払以前において、原告の届出暗証番号を他の者に漏洩したことはなかったことを推認することができる(右推認を覆すに足りる証拠はない。)から、本件支払は、少なくとも、原告の届出暗証番号の秘密保持に関する被告の過失によってされたものであるとは認められない。そして、原告は、他に本件支払が被告の責めに帰すべき事由により違法にされたことその他本件免責特約により被告に免責を与えることを不当とするような事情が存することを何ら具体的に主張立証しない。
(三) そうすると、本件支払は、支払機が、所定の方法でカードを確認し、支払機操作の際使用された暗証番号がカード上の届出暗証番号と一致することを確認して支払われたものであり、被告は、本件免責特約により免責されるものというべきである。したがって、抗弁2は理由がある。
三よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官青山正明 裁判官岩田眞 裁判官清水響)